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協力隊インタビュー

| INTERVIEW |

移住定住促進 柴崎 航さん

「地域の中と外へ耳を傾ける仕事」
—移住コンシェルジュと空き家バンク、二つの窓口から見つめる陸前高田と、気仙町に根を張る理由

地域おこし協力隊としての3年目

陸前高田市で移住定住の窓口業務を担うNPO法人高田暮舎で、移住コンシェルジュとして活動する地域おこし協力隊の柴崎さん。前回着任後のインタビューでは想定外な出来事もありつつ、地域おこし協力隊という肩書を超えて「人が紡ぐまちで生きる」ことを語っていた。着任3年目を迎え、市外から移住を考える人と、市内で空き家を抱える所有者、その両方の声に耳を傾けている。任期の終わりが見えてきた今、これまでの活動とその先に思い描く暮らしについて伺いました。


外に語り、内から聞く—二つの窓口が生んだ相乗効果

もともとのメイン業務は移住コンシェルジュ。空き家バンクは後から担うことになった業務でしたが、取り組み続けてみると、二つの仕事が互いを補い合っていることに気づいたと言います。


「移住コンシェルジュは、市外の人に向けて高田を伝える仕事。一方、空き家バンクに登録されている物件の所有者は高田出身の方やゆかりのある方がほとんどです。外と中、両方の人と関われるのがうまく作用しているんです」


所有者に「本当に移住する人なんているの?」と聞かれれば、実際の数字や移住者の目的を伝える。逆に、所有者から聞いた地域の歴史や文化は、移住希望者への案内に活かす。


二つの窓口に立つからこそ、陸前高田を立体的に伝えられるようになったと語ります。


自分が当事者になって、初めてわかったこと

今年、自身が相続の当事者になりかけたことがきっかけで、相談者への向き合い方が大きく変わったと言います。


「叔父が亡くなり、山形にある実家を相続するかどうか父が悩んでいたんです。『お前が欲しいなら相続する』と言われたとき、ああ、こういう気持ちなんだと。幼い頃に帰った景色のいい家で、簡単に『いらない』とは言えませんでした。それまでは所有者の方の気持ちを、分かったつもりでいただけだったんだと気づきました」


法的な判断は専門家の領域。だからこそ自分にできるのは、困っている気持ちを受け止め、少しでも気を楽にしてもらうこと。


「いろんなところにつないでくれてありがとう」という言葉が、何よりの成果だと話します。


「見る・聞く」から「体験する」移住へ

移住コンシェルジュとしては、陸前高田を紹介していく上で仕事の少なさと、提供できるコンテンツの幅に課題を感じると言います。

特に一次産業に関心を持つ移住希望者に対し、漁業は水産アカデミーという受け皿がある一方、農業は家族経営が中心で、未経験者が関わる難しさを感じています。


「見る・聞くだけでなく、体験できる何かを持てれば、PRの仕方も変えられると思うんです」


そんな想いから今年は、移住体験プログラムを見直しました。

これまで2泊3日のうち体験は1〜2時間ほどでしたが、10月のプログラムでは市内の生産者のもとでの収穫体験を軸に、商品や加工品になるまでの過程の見学も組み込み、体験の比重を大きく高める予定だそう。


「収穫だけの体験で終わると観光になってしまう。その先の仕事まで見てもらうことで、暮らしのイメージにつながればと思っています」


大切な家を、次へつなぐために

市内の空き家は約600軒。柴崎さんが力を入れたいと考えているのは、住まいの将来について、早めに考えるきっかけづくりだと言います。


「ご自身やご家族のこれからを考えたとき、家をどうしていくかも一緒に考えておくと、いざというときに慌てずに済むと思っています。いわば家の終活のようなもの。登記や家財の整理には時間がかかることも多いので、少しずつ準備しておくと、体力的にも金銭的にも負担が軽くなるんです」


先日は、社会福祉協議会が行う老人クラブの集まりで、家の片付けをテーマにお話しする機会も。


目指すのは、必ずしも空き家バンクへの登録ではありません。


売る、貸す、あるいは別の形でも、それぞれの家が納得のいく着地点を見つけられること。それが大事だと柴崎さんは考えます。



けんか七夕の仲間たちとこれからのこと

3年間を振り返るなかで、柴崎さんが何より大切な存在として挙げたのが、暮らしている気仙町今泉地区の「けんか七夕」の仲間たち。当初、地区の人にお祭りについて尋ねたところ、見学のつもりがいつの間にか参加することになり、今年で3年目になります。


「今泉に住んでいなかったら、途中で高田を出ていたかもしれません。しんどい時期に、七夕の人たちがいつも通りに接してくれた。それがありがたかったし、何も考えずにそこにいられたんです」


準備はゴールデンウィークごろから本番の8月7日まで続き、直前の1か月はほぼ毎日。


深く関わるほど良くしてもらえる一方、そのためには自分も祭りを担っているという意識が欠かせないと言います。


「900年以上続いてきた祭りを、よそから来た人間が終わらせるなんてことはあっちゃいけない。中途半端に抜けるわけにはいかないんです」


任期は来年6月末まで。その後も、可能なら空き家バンクと移住コンシェルジュの仕事を続けたいと語ります。


「相談してくださった方々を途中で放り出すのは嫌なんです。仕事自体も楽しいですし、充実しています。陸前高田に残るというより、気仙町に残るという選択。顔の見えるあの人たちのためなら、頑張れるんです」

編集後記

偶然住んだ地区で、偶然出会った祭りに巻き込まれ、気づけばその人たちのために残りたいと語る。柴崎さんの変化には、移住の本質が詰まっているように感じました。自らの体験を通して所有者の想いに寄り添う姿勢と、けんか七夕への深い愛着は、これからも陸前高田に移り住む誰かの支えになっていくのだと思います。(文・地域おこし協力隊事務局)


PROFILE

柴崎航

年齢

31歳

着任年月

2024年7月

出身地

東京都江戸川区

前職

院内救命士

趣味

手巻きたばこ、釣り、木工など

今の仕事内容

移住コンシェルジュとして移住希望者や移住者からの相談対応、Iターンの移住経験を活かして、暮らし情報の提供。空き家バンクとして登録や利用者案内等を行っている



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