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協力隊インタビュー

| INTERVIEW |

民泊推進 山本晃裕

「好きな人にいつでも会える」
—小さな決断を重ねた先に、陸前高田で暮らすという選択

大学時代から通い続けた町へ

大学生時代から陸前高田市に通い続け、この秋、地域おこし協力隊としてNPO法人SETに着任した山本さん。現在は広田町に暮らしながら、民泊事業を担当しています。「本当の意味での最初のきっかけは、たまたまです」と笑う山本さんに、移住までの道のりと、これからの暮らしについて伺いました。


「町民になるとは」という問いを抱えて

芝浦工業大学の建築学部で学んでいた山本さん。学生時代は、空き家を改修して地域活性化につなげるサークル活動の一員として、神奈川県真鶴町に通っていました。


そこで出会った方の言葉から、「町民になるとは?」を考え始めたと言います。


「その方はいつも『町に明かりを灯したい』と言っていて、『町民になるとはどういうことか』と問われ続けていました。それから月に1回ワークショップを開くようになり、チラシを回覧板で回してもらったり、商店にポスターを貼らせてもらったりしながら、自治会長さんに地域のことを聞いて歩きました」


その後、真鶴での活動にひと区切りを感じ、別の地域も見てみたいと考えていたところ、陸前高田で大学生が1週間滞在するプログラムに誘われました。

山本さんは「町民になるとは」という問いを胸に抱えたまま、陸前高田へやって来ました。


1週間で集まった、4人の住民

陸前高田でのプログラムでは、大学生が1週間で企画を立て、住民に声をかけて交流会を実施していました。1か月前から告知していた真鶴での経験からすると、「ありえない」スピード感でした。


「回覧板も回せないなか、口コミで必死に声をかけて、来てくださったのは4人。当時は少ないと思ったけれど、関係性もないところから4人が来てくれたのは本当にすごいことだと思い直しました。今思うと、自分にとっての成功体験だったんだと思います」


プログラム参加者として過ごす1週間が終わった後、住民から声をかけられました。

「次は、半年間関わる運営スタッフをやるんでしょ?」

「やります!」とすぐ答えた山本さん。それから2年半、関東から陸前高田に通い続けることになります。


「俺、移住したいわ」

陸前高田に通い続ける中で、移住を意識したのは、大学生に民泊を体験してもらうために民泊の受け入れ家庭を探して歩いていたときのことでした。

民泊とは、地元の一般のご家庭に泊まりながら、震災の経験を聞いたり農家漁家体験をしたり、町でのリアルな生活を体験し、町の方と交流することができる事業のこと。陸前高田市では都市部の学校が実施する教育修学旅行を誘致しています。


「初めてお会いした方に『あなたたちの名前、紙に書いて覚えておくわ』『写真も撮ろう』と言っていただいて。受け入れにはつながらなかったけれど、すごく嬉しくて。一緒に歩いていた仲間に『俺、移住したいわ』と話したんです。こういう人がいる町なら、自分は大丈夫だと思えました」


仕事より先に「ここで暮らしたい」という思いがあった山本さんにとって、移住とは「好きな人にいつでも会える最強のチケット」だと語ります。

「陸前高田に暮らす自分の好きな人には、ご高齢の方もたくさんいます。いつでも会える場所にいたいと思ったんです」


大学生プログラムから、民泊事業へ

大学4年の夏からは仕事として運営にも携わるようになったことで、当初は移住したら大学生向けプログラムの職員として働くつもりでいました。しかし、周囲から「住民と交流しているときがキラキラしている」と言われ、もっと住民と出会い、向き合える仕事もいいのかもしれないと考え始めていました。


そんな中、手伝いで参加した民泊の受け入れ。

お手伝いを通して、陸前高田の人が持つ温かさに改めて触れ、民泊事業を担う道を選ぼう。


そう感じたと山本さんは言います。

「仕事でいろんな人に会えるのが嬉しいですし、まちの中に入っていくと『よく来てくれたね』と迎えてもらえる。楽しい仕事です」


民泊は、大規模な受け入れを実現しながら、同じ地域で暮らす一員として民泊受け入れ家庭の方々との関係も大切に築いていくこと。


山本さんはその両立に向けて、自分なりのスタンスを模索している最中です。


陸前高田の「住民」の1人として

山本さんにとって地域おこし協力隊とは、「ある意味で普通の住民」だと言います。


だから、お祭りも見るだけでなく、自ら踊りに加わり、いずれは神輿を担ぐことにも挑戦したい。3月〜4月にわかめ漁を手伝うなど、季節ごとの営みにも関わりたい。1人の住民として、夏の草刈りに表れる、まちを美しく保とうとする住民の思いにも、自分なりに近づいていきたいと考えています。


「高田に住んでから、心も体もずっと調子がいいんです。この状態でどんなことができるのか、楽しみです」


最近は、住民から頂いたミントでアイスを作り、おすそ分けしたところ喜んでもらえたそう。各々が食材を作って持ち寄り、みんなで集まって食べる機会がもっとあってもいい、と目を輝かせます。


「移住するってことを考えるのは大きな決断に思えるかもしれません。でも僕の場合は、小さな決断を重ねた先で、気づいたら大きな決断をしていた感じなんです。だから移住を検討している方は、まずは1日だけでも地域に来て、人と話してみてください。土地の人を知ると、住むイメージがぐっと湧いてくるはずですし、小さな決断が生まれ始めると思います」



小さな決断を積み重ねた山本さんの陸前高田での暮らしが、今ここから始まっています。

編集後記

「町民になるとは」という問いを抱えて陸前高田にたどり着いた山本さん。その答えは、仕事を頑張りながら、草を刈り、お裾分けをする日々のなかに、すでに少しずつ形になっているように感じました。好きな人にいつでも会える場所で、自分の想像を超える自分へ。山本さんの挑戦は始まったばかりです。(文・地域おこし協力隊事務局)


PROFILE

山本晃裕

年齢

23歳

着任年月

2026年9月

出身地

群馬県みどり市

前職

学生

趣味

温泉、地域グルメ探しなど

今の仕事内容

大学生の頃、地域住民と企画をつくった経験を活かし、陸前高田市、大船渡市、住田町にまたがる「気仙民泊」の受け入れ家庭開拓と受け入れ当日運営を行っている


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