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協力隊インタビュー

| INTERVIEW |

地域産業資源開発・地域振興施設開業サポート分野協力隊
竹田耕大さん

ゼロから、地域の顔「道の駅」をつくる。

 神奈川県厚木市出身の竹田耕大(たけだこうだい)さんは、2018年に岩手県陸前高田市の地域おこし協力隊として着任。

三陸道の駅「高田松原」の開業準備・運営に関わるという、全国的にも珍しいミッションを担って活動してきました。

現在は協力隊の任期を終えましたが、道の駅に携わり続け、道の駅内のカフェ「すなば珈琲」や、物産コーナーの開発・運営にも携わりながら、来訪者に地域の魅力を届けています。


 竹田さんの根底には一貫して「地域と外の人の架け橋になりたい」という思いが流れています。

その原点と、協力隊時代の歩み、そして今後の展望について伺いました。



震災ボランティアで出会った「問い」を追いかけて


 竹田さんが初めて陸前高田を訪れたのは、2011年の大学1年生のとき。

東日本大震災直後、大学の春休みを利用して釜石や大槌などをボランティアで巡った際、陸前高田にも立ち寄ったことがきっかけでした。


「大学のゼミでは復興とは何か定義づけするというテーマで卒業論文を書いていて。

当時から何度も陸前高田に足を運びました。

現地で出会う方々の語る復興と、外から来たボランティアが使う復興という言葉の違いや、行政と地元民との温度差に、ずっとモヤモヤを感じていたんです。

自分なりにそれを知りたい、整理したいという思いが、今も根っこにあるんだと思います」。



学生時代からボランティアで被災地に通う竹田さん
学生時代からボランティアで被災地に通う竹田さん


「30歳で移住しよう」だったはずが、 思いがけず早まった転機


 大学卒業後は、一度地元・首都圏で就職。横浜で水族館や遊園地などのレジャー施設を運営する企業に入社し、総務や監査業務など、主に裏方を担当していました。


「いつかは陸前高田で暮らしたいと考えていたけれど、当時は不安もあって。こっちでどんな仕事ができるのか分からなかったし、まずは都会で働いてみようと決めたんです。30歳くらいになったら…と漠然と考えていました」。


 転機が訪れたのは20代後半、友人から「陸前高田で道の駅を立ち上げるらしいよ」と聞いたこと。しかも、自分が関心を持ち続けてきた“レジャー施設”のような空間を一からつくるという稀有なチャンスでした。


「思ったより早かったけれど、これを逃したら同じことはもうできないと感じて。地域おこし協力隊として、手を挙げることにしました」。



開業準備から運営まで、道の駅立ち上げの最前線へ


協力隊としての最初の配属先は、陸前高田市役所農林課。

「道の駅高田松原」の開業準備と運営に関わる、まさにゼロからの挑戦でした。


「施設設計の相談、事業計画の立案、収支試算、資金調達やテナントとの交渉まで、すべてが初めての経験でした。

当時の業務は、正直なところ地域おこし協力隊というよりは市の職員に近い感覚でしたね」。


 2018年7月の着任から2019年9月のグランドオープンまでは怒涛の日々。

施設内にどんなテナントを誘致するか、座席の配置はどうするか、来訪者の動線をどうつくるか…すべての判断が「地域の顔」になる施設の未来を左右する重要な要素でした。



休日は県外のお客様で賑わう道の駅高田松原
休日は県外のお客様で賑わう道の駅高田松原

コロナ禍でも、地域の魅力を発信し続けた日々


 無事に開業を迎えた「道の駅高田松原」でしたが、その数ヶ月後、世界はコロナ禍に突入します。竹田さんも一時的に店舗休業や時短営業に対応しながら、食材を活かした新メニューの開発や、観光客向けの情報発信などに奔走しました。


「制限がある中でも、できることを模索しました。道の駅に足を運んでくださった方が『また来たい』と思ってくれるような体験や商品を届けたいという思いがありました」。



2021年に立ち上げた「陸前高田サイクルシティプロジェクト」

今は「スナバ珈琲」で、日常の中に地域の誇りを添える


 地域おこし協力隊の任期を終えてなお、道の駅高田松原に勤めている竹田さん。

現在は、道の駅内にある市直営のカフェ「すなば珈琲」の店長的な役割を担っています。

その他、商品開発から売上管理、観光イベントとの連携まで、業務は多岐に渡ります。


「まだまだ、道の駅でやりたいこと、表現しないといけないことがあるんです(笑)。

それを昇華しないと。

最初からやりたいことがいっぱいあったわけではないですが、10個仕掛けたら、さらにやりたいことが増えていってしまうんですよね。

今担当しているカフェについてでいえば、観光客だけでなく、地元の人にも来てもらえるカフェでありたいと思っています。

たとえば季節のスイーツに地元産いちごを使ったり、マグカップに行きたい場所を書いてもらってSNSで発信したり。

小さなアイデアでも、地域と人がつながる仕掛けになるはずなんです」。



竹田さんがつくった売り場には、地元の商品が並んでいる
竹田さんがつくった売り場には、地元の商品が並んでいる

「想像以上に、仲間はいる」−−協力隊を目指す人へのメッセージ


「陸前高田に来る前は、同世代の人なんていないと思っていたんです。

でも実際には、同じような志を持った人がたくさんいました。

観光に関わる仲間も増えたし、ゆるやかに支えてくれる地元の方もいる。

何より、このまちには”外から来た人”を受け入れる土壌があります」。


 協力隊制度はあくまで“制度”にすぎない、と竹田さんは語ります。

地元の人たちとも積極的に交流し、「氷上太鼓」「仲町虎舞」など伝統芸能の活動にも参加しています。


「大事なのは、制度を使って何をしたいか。

この地域でどんな暮らしをして、どんな挑戦をしたいかという意思の方がよっぽど重要だと思います」。



現在は、すなば珈琲で店長のような業務にもあたっている竹田さん
現在は、すなば珈琲で店長のような業務にもあたっている竹田さん

これからも、「また来たい」と思えるまちをつくるために


 今後は、平泉などの県内観光地と陸前高田をつなぐ広域的な連携や、リピーター創出の仕組みづくりに力を入れていきたいと話す竹田さん。


「観光って”点”ではなく”線”だと思うんです。

一本松だけ見て終わるのではなく、高田の魅力をもっと知ってもらって、また来てもらえるような流れを作っていきたいですね」。


7年間の歩みの中で培った経験と人脈を活かし、陸前高田の未来に繋がる小さな「仕掛け」を今日も仕込み続けています。





道の駅高田松原

〒029-2204

岩手県陸前高田市気仙町字土手影180夏期営業時間 9:00〜18:00

冬期営業時間 9:00〜17:00Tel:0192-22-8411

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