協力隊インタビュー
| INTERVIEW |
アクティビティーツーリズム分野協力隊 植田豊デンゼルさん
海の賑わいを、もう一度この町に。
— SUPを軸に、この場所に人が集い続ける仕組みをつくる
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水辺の賑わいを取り戻すというミッション
「一言で言うと、“海の賑わいを取り戻すこと”です。」
そう語るのは、地域おこし協力隊として活動する植田さん。震災後の水辺に再び人の流れを生み出すため、SUP(スタンドアップパドルボード)の普及に取り組んでいます。
活動の柱は大きく3つ。
小学校での体験授業、一般市民向けの体験会、そして市外在住者向けのイベントの企画運営です。
「子どもたちには、地元の魅力を知ってほしい。外に出ても“地元っていいよね”と言えるような体験にしたいと思っています。」
さらに、観光物産協会と連携し、SUPを指導できるサブインストラクターの育成にも着手。最終的には、地域の人たちが自分たちで運営できるような、そんな仕組みづくりを進めています。
想定を超えた反響と、広がるつながり
着任から1年。活動は想定以上の広がりを見せています。
「集客も想像以上でしたし、SUP業界の中でも評価をいただけるようになりました。」
特に印象的だったのは、世界チャンピオンをはじめとするトップ選手が訪れるようになったこと。
「まさかそんな方々とつながれるとは思っていなかったので、本当に驚きました。」
地域の取り組みが外へと広がり、新たな関係性を生み出していく。その手応えを感じた1年でもありました。

プレイヤーとしての成長と、地域の魅力の再発見
SUPは着任後に本格的に取り組み始めた分野でした。
「最初は初心者でしたが、全国各地の大会に出たり、レベルの高い方と一緒に漕ぐ機会をいただく中で、少しずつ成長できました。」
競技としても実力を伸ばし、今では大会で上位に食い込むまでに。
同時に、地域の見え方にも変化がありました。
「陸前高田って、人口規模が大きすぎないからこそ、新しいことに挑戦しやすいんです。」
2つの海水浴場を持つという地理的な特徴も、観光資源としての強みだと実感しています。
教育との再接続と、支え合う関係性
冬の時期には、英語教育にも携わっています。
実は前職は高校の英語教諭。
一度教育現場を離れた中で、同じような関わり方をボランティアで行うことには葛藤があったと語ります。
「最初は正直、少しネガティブな気持ちもありました。」
それでも実際に子どもたちと関わる中で、気持ちは少しずつ変化していきました。
「やっぱり教育自体は好きなんだなと感じました。」
その背景には、周囲の支えもありました。
「同じく地域おこし協力隊でもある妻や市の交流推進課の方が、“無理のない範囲での挑戦をしてほしい”と声をかけてくれて、それがすごく大きかったです。」

人が通い続ける仕組みをつくる
植田さんが見据えているのは、「関係人口」を増やすことです。
「観光で終わるのではなく、“また来たい”だけでもなく“通いたい”と思ってもらえる状態をつくりたいです。」
市民クラブのようなコミュニティを構想し、サードプレイスとしての機能を持たせることで、メンバー同士が会うために訪れる関係性を目指しています。
自分なりの距離感で、地域と関わる
プライベートでの関わりについては、意識的に適度な距離感を保っているといいます。
「近所付き合いを頑張りすぎて疲れてしまうこともあると思うので、無理のない距離感を大事にしています。」
一方で、仕事を通じたつながりは深く、信頼関係も築かれています。
「津波警報が出たとき、地域の方がすぐに知らせてくれて、どう動くか教えてくれたことがあって。その優しさと防災意識の高さには本当に驚きました。」
そのバランスが、この地域の安心感につながっています。
1を10に広げていく、これからの挑戦
今後は、関係人口の範囲を東北全体へと広げていく考えです。
「去年は基盤をつくる1年でした。今年はそれをしっかり広げていきたいです。また協力隊の3年間での最大の目標は、3年目に大会の誘致を実現させることです。」
さらに、協力隊同士のつながりにも目を向けています。
「悩みを気軽に話せるような、“職場の給湯室”のような場をつくれた らいいなと思っています。」
個人の活動だけでなく、関係性や仕組みを育てていく。その視点が、これからの展開を支えていきます。

編集後記
SUPをきっかけに、人が集い、関係が生まれ、また訪れる理由になる。
その循環を生み出そうとする植田さんの取り組みは、 地域おこし協力隊という枠を超え、町の未来そのものに関わる挑戦のように感じられました。
(文・地域おこし協力隊サポートチーム)
PROFILE | 植田豊デンゼルさん |
年齢 | 31歳 |
着任年月 | 2025年4月 |
出身地 | 岩手県奥州市 |
前職 | 高校英語教諭 |
趣味 | サウナ、コーヒー |
今の仕事内容 | 震災後の水辺の賑わいを取り戻すためSUPを推進。体験会やイベント、教育活動を通じてこれまでに158名を集客し、地域の魅力発信と人材育成に取り組んだ。 |