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協力隊インタビュー

| INTERVIEW |

NPO法人さくらの杜プロジェクト陸前高田 酒井学さん

桜を植え、その先に人の流れをつくる。
— 10年後の風景を描く、協力隊という選択

ゼロから事業を立ち上げるという役割


NPO法人さくらの杜プロジェクト陸前高田の事務局を務める酒井さんは、

地域おこし協力隊として、立ち上げて3年目のNPOの運営を一手に担っています。


専従職員は自身のみ。

事業計画の立案から資金調達、現場の企画運営までを担い、10年間で最低3,000本の桜を植えることを目標に、植樹地の選定やペース、財源確保まで設計しています。


単に桜を植えるのではなく、「どう続けていくか」を見据えながら事業を作ることが、酒井さんの役割です。


「公園で終わらせない」という構想と、この街との出会い


協力隊としての活動の背景には、震災直後から関わってきた復興の仕事があります。

高田松原津波復興祈念公園の整備に関わる中で感じたのは、


「せっかく人が訪れても、祈念公園だけ見てそのまま帰ってしまうのではないか。

市民もまた、高台やかさ上げ地に移転した住宅から祈念公園や松原へ向かわないのではないか。」


という懸念でした。

そこで着想したのが、祈念公園と街を繋ぐように桜を植え、人の流れを広げていくという構想です。


「“陸前高田=震災”だけでなく 、“桜の街だよね”と言われるような、新しい魅力をつくりたいと思いました。」


横浜出身の酒井さんにとって、この街を選んだ理由のひとつは、その自然環境にもありました。


「山、川、海、平野が1日で歩ける範囲にある。

この“ヒューマンスケールの自然”に惹かれました。」


震災直後に初めて訪れてから15年。

その思いは変わることなく、自分の関わり方次第で地域との距離が変わるという余白の大きさにも魅力を感じ、この地での挑戦を選びました。



長い時間をかけて育てる、まちづくりの仕事


活動の中で最もやりがいを感じるのは、自ら描いた構想が少しずつ形になっていく瞬間です。


「植えた桜が並んでいるのを見ると、やってきたことが実感できます。」


また植樹祭の参加者からの「良かった」「頑張って」という言葉も、大きな支えになっています。

一方で、現実的な課題も少なくありません。土壌条件や冬の季節風で桜が育ちにくいことや、活動資金を補助金に頼らざるを得ない状況など、理想通りには進まない難しさもあります。


「本当は土壌改良もしたいのですが、限られた財源の中でどう進めるかが難しいところです。」


さらに、桜が咲き、花見ができるまでには最低でも10年という時間がかかります。

その間も価値を生み出し続けるために、酒井さんは工夫を重ねています。


「植樹だけで終わらせず、他のイベントや大学生との活動、地域の住民や学校との連携など、常に何かと組み合わせることを意識しています。」


前職で培ったさまざまな人たちとの合意形成の経験を活かしながら、関わる人それぞれに意味のある形をつくる。その積み重ねが、活動の広がりを支えています。



暮らしを整えながら、地域と関わる


前職では多忙な日々を送っていた酒井さん。

現在は、暮らしそのものを楽しめるようになったことも、大きな変化のひとつです。


「一呼吸おいて、自分の生活も大事にしたいと思うようになりました。」


地域との関わりも少しずつ広がり、うごく七夕まつりへの参加や、自宅の裏山での野良仕事、自転車、カヤック、トレッキングなど、都会ではやりづらかった趣味を満喫しています。 

また、実際に暮らしてみて感じたのは、この街の暮らしやすさでした。


「スーパーや病院も近くて並ばないし、渋滞もない。

それでいて生活には困らない、まさに理想のコンパクトシティです。」


都会すぎず、田舎すぎない環境の中で、自分のペースを大切にした暮らしが実現できています。


次につなぐための1年へ


任期も残り1年を切り、今後は「その先」を見据えた動きが重要になります。


「自分が卒業した後も、このプロジェクトが続く形をつくりたいです。

さらには桜だけでなく、この街の資源をフルに活かして、交流人口や定住者の拡大につながる取組を目指していきたいです。」


組織としての継続性や、次の担い手の確保も大きなテーマです。


「事務から企画まで一人で担うのは大変なので、自分が苦手な分野が逆に得意な若い人たちと一緒にできる形が理想ですね。」


活動を“自走”させるための仕組みづくりが、これからの1年の鍵となります。


編集後記

桜を植えるという行為は、とても時間のかかる営みです。

すぐに成果が見えるものではありません。

それでも、その先にある風景を信じて手を動かし続ける。

酒井さんの取り組みは、地域おこし協力隊という枠を超え、未来を少しずつ形にしていく仕事のあり方を示しているように感じられました。

(文・地域おこし協力隊サポートチーム)

PROFILE

酒井学さん

年齢

56歳

着任年月

2024年4月

出身地

神奈川県

前職

建設コンサルタント

趣味

庭仕事、山仕事、山歩き、自転車、キャンプ、カヤック、温泉、廃線・廃墟・廃鉱山さがし、DIY・工作・模型

今の仕事内容

NPO法人さくらの杜プロジェクト陸前高田事務局。事業計画立案、植樹地の確保、資金(補助金、寄附等)獲得、植樹会の企画・実施など、運営全般に携わっています。


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