協力隊インタビュー
| INTERVIEW |
特定非営利活動法人高田暮舎 植田 聡美さん
地域の暮らしを、無理せず、楽しみながら
― 陸前高田で見つけた“ちょうどいい”日々

移住のきっかけは、ご主人の挑戦と自然な流れで
陸前高田市への移住のきっかけは、ご主人がサップ(SUP)の店舗を開くことになったことだった。地元・岩手県内とはいえ、実は訪れたのはこの移住が初めて。
まちの様子すらイメージのないまま飛び込んだが、不安はほとんどなかったという。
「前職が八戸市の金融機関だったんですが、毎日朝から晩まで働き詰めの生活で、家に帰ってもご飯食べて寝るみたいな感じの生活でした。
今は仕事も9時〜18時でしっかり区切られていて、朝の時間に散歩したり、ジムに通ったりと、自分の時間を持てるようになりました」
以前住んでいた場所では味わえなかった穏やかさが、ここでは日常になっている。
運動嫌いから週2ランナーに!?
暮らしの変化がもたらしたもの
「もともと走るなんて絶対無理、って思ってたんです」と笑う彼女。
しかし、今では夫と一緒に週2回のランニング、週末はサップという、アクティブなライフスタイルに変化した。
生活のリズムに合わせた無理のない運動が、心と体のバランスを整えてくれている。

「やってみようか」タイプの私が移住を決断するまで
「自分から大きなチャレンジをするタイプではなくて。
でも、一緒にいる人が挑戦するなら“やってみようか”って背中を押せるタイプかもしれません」
新卒から6年間勤めた銀行を辞めるのは大きな決断だったが、
挑戦するのは年齢的にも今のタイミングがいいのかなと思ったそう。
「銀行を定年まで続ける未来が想像できなかったんです。ちょうどいいタイミングだったのかなって。
職種は変わっても、“人の話を聞いて、それを形にする”という軸は今も変わっていません。」
また、大学で地域政策について学んでいたこともあり、地域社会の活性化に携わる人材への憧れがあり、
地域住民と移住者の橋渡しとして貢献できるよう、地域おこし協力隊としての移住を決意したそう。
「移住したい」のその先へ。本気度を高める関わりを
現在は地域おこし協力隊として移住コンシェルジュに就任し活動中。
日々、移住希望者やお試し居住の参加者と接する中で、ある課題意識が芽生えている。
「毎年多くの人が移住してきますが、数年後に残っている方はごく一部です。
本気で移住を考えてもらうには、どんな関わり方ができるか、定住につなげるには何が必要か、考えるようになりました。」
今すぐ大きな制度を作ることはできないが、相手の気持ちに寄り添いながら、1人ひとりの“本気度”を少しでも引き出せたら
——そんな思いが彼女の原動力になっている。

地域に根ざし、つながりを育む
高田暮舎では、年に6回、移住者・地元住民を問わず参加できる交流会を開いています。
岩手県内でもこれほど定期的に開催している自治体は少なく、
移住者を受け入れる風土が根付いている陸前高田らしさを感じているそう。
「こうした交流を通じて、移住者の孤独感を和らげ、地域の人とのつながりを後押できればと考えています。
将来的には「地域住民が移住者を知るきっかけ」として広く親しまれる場に育てていきたいです。」
そのほかにも、積極的にコミュニティ活動に参加し、高田暮舎職員としてではなく、
自分自身についても知ってもらえるよう信頼関係を構築していきたいと話す。
理想は「ずっと暮らしていける状態を保つこと」
「将来のビ ジョンは明確にはないんですが、“適度に暮らしていける生活”を保てるようにしたいんです」
派手な夢はなくても、静かに息の合った日常が、彼女にとっての理想。
仕事も「優しい人たちに囲まれて、みんなで作っていこうというようなことをおっしゃってくださるし不便を感じたことはない」と、安心感に満ちている。
編集後記
静かに、確かに、自分の暮らしを丁寧に築いている彼女の姿が印象的でした。
無理をしない。
でも、自分の「ちょうどよさ」を信じて行動する。
移住に興味がある人にとっても、どこか背中を押されるようなインタビューでした。
(文・地域おこし協力隊サポートチーム)
PROFILE | 植田聡美さん |
|---|---|
年齢 | 29歳 |
着任年月 | 2025年4月 |
出身地 | 岩手県 |
前職 | 銀行員 |
趣味 | SUP、キャンプ |
今の仕事内容 | 移住希望者や移住者からの相談対応、I・U ターンスタッフの移住経験を活かして、暮らし情報の提供や空き家バンクと連携した物件の案内等を行っている |